6/20(月)・21(火)、東京都立国際高校の授業公開が行われました。
各教室が解放され、国際高校の日々のリアルな授業の様子を見学することができる貴重な機会ですので、21日(火)弊社も訪問して参りました。
今回は、そこで実際見聞きした国際高校のリアルな魅力をお伝えしたいと思います!
※校舎内撮影禁止のため、外観以外はすべてイメージです。
【1】立地・通学環境
京王井の頭線、駒場東大前駅と池ノ上駅の中間地点ほどの、緑豊かな駒場野公園に隣接する都立国際高校。
東急田園都市線池尻大橋駅からも徒歩約15~20分ほど。
東海大学通り、淡島通りと、バス利用もでき、目黒区・世田谷区・渋谷区・新宿区と、広範囲からも通学できる利便性のよい場所に位置します。
【2】学校概要・学科コース
国際バカロレアディプロマ・プログラム認定校で、その名の通り、「国際学科」と「国際バカロレアコース」とで、国際感覚を身に着け、豊かな人間性を育む教育が施されています。
英語教育、または国際学科の学校と言えば、これまでは私立が主流でした。
交換留学や短期長期留学、ホームステイ、修学旅行を兼ねた海外研修など、何かと費用もかかる「国際」の学び。
決まった一定予算内で行う公教育においては、都立公立で行うには、どうしたって難しいことだったのかもしれません。
ですから、名ばかり「国際学科」「国際コース」でも、そうした私立高校に比べ、所属するのはJLTばかりでALTの数が、普通科の他高校とさほど大差が無かったり、採用がフィリピンなど一部アジア圏のALTに偏り、英語という言語習得では十分でも、多文化を学ぶには十分ではなかったりする実情がありました。
しかし、都立国際高校においては、コースの1つとして「国際科」があるわけではなく、「国際科」と「バカロレアコース」として、国際専科の高校となりますので、帰国子女や在京外国人学生の受入も多く、外国人教諭の割合も高いです。
そのため、一歩足を踏み入れると、服装や髪型などは生徒・教員共に、都立(公立)にしてはかなり自由度が高く、一瞬「海外の学校に来たかな?」と思えるような雰囲気。
古風な考えの日本人であれば、いささか違和感を覚える方もいるのかもしれませんが、髪の色がカラフルでも、服装が多少崩れていても、元々高校入試では偏差値60後半ほどを要し、都立高校ではTOP10に入る学力レベルの高さですので、在学する生徒さんたちには良識はあり、挨拶など礼儀礼節は保たれ、自分たちをしっかり持っているので、学校では、それぞれが個を尊重されているという印象です。
「バカロレアコース」は定員が25名と少ないため、国際バカロレア資格(国際的に認められている大学入学資格)取得のために、必要なプログラム指導が行われます。
当然使用教科書も異なり、科目問わず英語表記教材です。
「国際科」でもIBの教育理念に基づいた指導が行われますが、国内の大学受験への配慮もあり、一般の普通科のような授業も当然行われます。
国内の難関国私立への合格実績も持ちますが、毎年10~20名程度が海外の大学へ進学するそうです。
※詳しい大学進学実績はコチラ。
【3】授業の様子
都立国際高校の授業では、実際英語以外にもその多くの授業が英語で行われています。
また、見学に巡回した各教室からは、韓国語や中国語、スペイン語やドイツ語など、英語以外の他言語も聞こえてきます。
ヒンディッシュ(ヒンディー語と英語)、ベングリッシュ(ベンガル語と英語)、タングリッシュ(タミル語と英語)、スパングリッシュ(スペイン語と英語)など、英語が世界の共通言語化した中、その英語と各国の母語が融合した言語が存在します。
グローバル教育はもはや「英語を話せるようになること」「英語圏の文化を知ること」ではありません。
ロシアのウクライナ侵攻からも悟るように、様々な国と地域を知り、差別偏見なく、異なった文化を受け入れながら協調性を見出していける力を身に着けることが、何より大切です。
そのためには、「英語科」「フランス語科」「中国語科」…というように、一部特定地域のみ掘下げる既存の学びよりも、多言語に触れ、あらゆる角度(立場)から物事を見られる広い視野を持つような学びは、魅力的ですね。
また、選択授業だと思いますが、かなり少人数制のスタイルがとられている印象でした。
十数名の授業がある一方、4~5人という授業も見られました。
ここに外国人教諭がついて授業するというのは、英語でのコミュニケーションが密で、かなり贅沢に思われますね。
他の学校と比較すると、悪い言い方になるかもしれませんが、ICT教育という面では、少し遅れているかもしれません。
授業スタイルは、昔っからの緑色の黒板にチョークで板書する授業が主流なようで、一部そうしたものに敏感な先生方が、動画資料やPPTなど投影し授業しています。
「必要なことを教えて子どもたちが理解する」
という観点で言えば、そうしたものを使ったほうが必ず効果的であるとも思えず、生徒さんたちが板書をノートに写したり、となりのヒトと積極的コミュニケーションで外国語を実践しようとしたり、学ぶという前向きな姿勢がみられるので、授業スタイルはある意味どうでもいいのかもしれません。
廊下などに張り出された、生徒さんたちのおすすめ本の紹介や、独自に調べた他国の文化や政治、日本との比較などの掲示物も、PCタブレットなどを駆使して制作されたものではなく、至ってシンプルに、手書きでプリントアウトされた写真が添えられているというような作品がほとんど。
学校側が積極的にしそうた機器を活用させようとは仕向けていないことがうかがえます。
生徒さんたちの労力や探究の心が、手書きの文字や絵に表れ、個人的には素晴らしいと感じましたが、もしタブレットなどの端末を活用しながら、最新教育システムで最先端の何かを求めるような方は、物足りない印象となるかもしれません。
【4】図書室・自習スペースの活用
学校の施設内でいつも気になるのが、図書室です。
都立国際高校の図書室には、約32,000冊の所蔵数があり、その内約6,000冊(約19%)が外国語の書籍だそう。
今どきの高校生が好きそうな小説はじめ、歴史漫画やSDGs関連の環境本、受験用の赤本など、ジャンルは幅広く見受けられます。
外国語の書籍の中には、歴史的人物を扱う伝記や、各国ごとの立場で書かれた戦争の歴史本など、英語を学ぶための本ではなく、英語で普通に中身を読むような興味深いものがたくさんありました。
自習ができる広めの机と席が、図書室の半分ほどのスペースを占めており、朝8:30から16:30まで、自由に利用できるそうです。
図書室以外にも、各フロアの廊下のところどころに、電気スタンド付きの机が設置され、生徒さんたちが勉強や調べものをしたいとき、教室以外にいつでも使える個のスペースが持てることは、特に受験期を迎えるころにはとてもうれしい環境であるでしょう。
東京都立としては初の国際学科高校として平成元年に創立された、都立国際国際高校。
時代が変わり、国の教育方針も大きく変化したこの34年。
今、一体どのような指導が行われているのかを、今回の授業公開で知ることができました。
他国言語や文化に関心を持つお子さんや、将来日本を飛び出し海外で活躍したいお子さんには、ぴったりです。
キリスト教の教えの元、英語・国際教育で地位を築いた名門私立でなくとも、自らに学ぶ意思があれば、様々な国と地域・言語に触れ、国際感覚を身に着けられる十分な環境があると、実感しまいた。
言語はじめ、文化や政治、歴史的背景と宗教。
都立国際高校の生徒さんたちは、あらゆる面から世界を見渡せる、「日本人の1人」ではなく、壁のない「世界の中の1人」になるような大人になってくのではないでしょうか。
弊社の会員生徒やその保護者の皆様にも、ぜひおススメしたい学校の1つであると、今回の公開授業を通じて思いました。
7月には、学校施設見学会。
10月にも、2回目の公開授業と学校説明会が予定されています。
関心の方は、コチラのスケジュールをご確認の上、是非一度訪問してみてください!
【参考サイト】
・文部科学省IB教育推進コンソーシアム
・BBC NEWS Japanサイト「英語はこれからも世界の共通言語でいられるか」
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-44220537
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