前編(https://cbyedtech.com/post/984/)に引き続き、今回はその後編です。
文科省が年明けに公表した『児童生徒の学習評価の在り方について』からうかがえる、これからの小学生の学習評価基準がどのように変わっていくのか?またそれへの具体的な対応策は?という観点から語っていこうと思います。
後編)3観点からの学習評価基準
今回の学習指導要領改訂により、(小学生だけでなく、中学・高校も同様に)各科目の目標や内容は、以下の資質・能力3つの柱で再調整が行われています。
1.知識および技能
2.思考力・判断力・表現力等
3.学びに向かう力・人間性等
小学生においては、現行同様3段階(A/B/C)評価となります。
まず、1.知識および技能について。
各教科の既有の知識および技能の習得状況について評価されます。ここでのポイントは、他の学習や生活の場面でも活用できる程度に概念等を理解したり、技能を習得しているか。
これが何を意味しているかと言えば、例えば小6算数の「図形の拡大縮小」の単元。
単に比を使って拡大・縮小の計算ができるだけではなく、地図上でのある場所から場所の距離を求めさせたり、建物の高さを求めさせたりするような問題がイメージされます。
実際答申には、「ペーパーテストにおいて、事実的な知識の習得を問う問題と、知識の概念的な理解を問う問題とのバランスに配慮する」という記載もあります。
計算などに比べ苦手な子が多いですが、文章題や資料などを含む問題への対策や強化が必要かもしれません。
次に、2.思考力・判断力・表現力等について。
その評価方法として、ペーパーテストのみならず、論述やレポートの作成、発表、グループでの話し合い、作品の制作や表現等の多様な活動を取り入れたり、それらを集めたポートフォリオを活用したりするとされています。
この観点において言えば、テストの点が取れるだけでなく、書く力・話す力・討論する力・伝えるためにより良い表現方法を選択し工夫する力が必要であると推測できます。
全部がそれぞれ得意という子どもは決して多くはありませんが、表現力のバランスの良いことが望ましいと思われます。
最後に、3.学びに向かう力・人間性等について。
「主体的に学習に取り組む態度」を評価されることになりますが、これまでよく見受けられた挙手の回数・ノートの取り方といった形式的な活動ではないということが、この答申では明確に記載されております。
字が汚く雑な作業になって、評価に損をしていた男の子たちや、控えめで恥ずかしさゆえに中々挙手できなかった女の子たちには吉報かもしれませんね。
しかしながら、この項目は、生涯にわたり学習する基盤形成の上では、今述べている3つの柱の中でも、極めて最も重要な位置づけとしているものです。
ですから、この項目については正しい理解と把握をした上で、どうあるべきかをしっかりと認識しておかないと、「自分では頑張っているつもりなのに全然評価が得られない」という事態にもなりかねません。
ポイントは2つ。
生徒児童自らのメタ認知と、自己による試行錯誤。
メタ認知とは、自分自身を客観的に認知する能力のこと。変化の激しい時代に適応できる人材を産出したい意図があります。
また、メタ認知により自分を客観視して学習状況を把握した上で、試行錯誤し学習を調整しながら学ぼうという意思を持てるか、言い換えれば、よりよく学ぼうとする意欲を評価しようと図られているのです。
これは、実際の教科を通した学びだけから得られる力というより、子どもたちの日常生活でのメンタルやマインドの持ち方を、学校での教科学習を通して更に実践トレーニングしていくようなイメージになるはずです。
例えば、自宅でお皿洗いのお手伝いを子どもがするとしましょう。お母さんには10分で済むようなことが、子どもには30分もかかってしまう。
そこで子どもは、次のような発想になれるか?ということ…
自分はお母さんよりも時間がかかる。
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もっと早く終わらせられれば、違うことにも時間が使える。どうすればいいのか?
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家族みんなが食べ終わってからまとめて洗うのではなく、食べ終わった順に何回かに分けて洗ってみてはどうだろうか…?
こうした日常の中から、自己課題を見つけ、工夫するということができる子であれば、学校での教科学習に置き換えても同じことが無意識にできるはずです。
子どもの気付きにあたる部分は、自然とできることではなく、親が気付かせてあげることも必要でしょう。
お休みの日に家族ででかける。さてどこへ行く?どういう方法で行く?
月のおこずかい。どう使う?または使わない?何を買う?どこでどのように買う?
などなど、なんでもない小さい事柄を親がすべて決めてしまわずに、子どもに投げかけ考えさせるということが、有効的な方法ではないでしょうか。
学習指導要領は、あくまで掲げるところの理想や到達したい目標であり、それを実現できるかどうかは、学校生活だけでは難しいこともたくさんあります。
学校と家庭という色分けなく、子どもたちが自立して自らの人生の歩みを進められるよう、国の方針を理解しつつご家庭の中でもそれを取り入れ実践して、相乗効果があればより良いと感じます。
評価はあくまで他人による評価に過ぎません。評価だけを気にするばかりに、自分を持てない大人にはなってほしくはありませんね。
けれどわたしたちは自分一人だけで生きているわけではありませんから、自分がヒトにはどう見えているのか?という客観視した観点を知ることもまた、将来社会の中で生きていくための勉強にはなるはずです。
新・学習指導要領施行の中で、子どもたちにとってより良い学びの環境があることを切に願います。
参考:明治図書「教育Zine」2019/1/31より▼
https://www.meijitosho.co.jp/eduzine/news/?id=20190042