以前、公立中高一貫校受験を志すにあたり、いつからその対策に取り組んだらよいかという話題について執筆したところ(https://cbyedtech.com/802/)、反響が大きく、2020年度の公立中高一貫校受験が終わったまさに今、再びそのテーマについて述べてみたいと思います。
まず、本題に入る前に、「公立中高一貫校受験」について、親御さんの根本的な意識を変えておく必要があります。
それは、これまでの一般的な中学受験とは別物として認識しておく必要があるということです。
「中学受験」というのは、これまで、首都圏を中心とした、ブランド力の強い私立や国立の中高一貫校をお受験することを意味しました。
早くから学年を超え先取り学習を行い、中高という6年を一貫して学ぶ環境があることが、その後の大学受験に備えるために良いとされてきました。
一貫校ならあれがいい、これがいいと色々魅力はあるにせよ、一番の目的は「大学受験の成功」。当然学校側も、進学実績そのものをブランド力とし、熱の入った学習指導を行います。
けれど、公立中高一貫校については、そうではないのです。
いえ、公立中高一貫校でも大学進学実績を出したいと思っているのは本音のところだとは思います。けれど、そもそもの設立目的が私立とは異なるため、公に大学受験の実績を追求するわけにはいかないというのが現状。
具体的には、公立中高一貫校の設立は、激動する時代変化の中で、中等教育の多様化をはかり、進学先としての選択肢の幅を広げることを目指して行われています。
それゆえ、入学試験も、本来は学力などをはかる試験ではなく、適性検査と呼ばれるもので、あくまで適性を診断しているという体になっています。
あくまで公立ですから、難問奇問を出題し、塾などに通い高い知識を身に着けられた学力の高い子だけを入学させるような偏りがあってはいけないわけです。
少々前置きが長くなりましたが、私立の一貫校と公立中高一貫校ではこのような違いがあり、そもそもの目的や受験との向き合い方が変わりますので、親御さんは、私立の中学受験をさせるのと同じ感覚で、公立中高一貫校を受験させないように、意識を変えて臨んでください。
それでは、タイトルについての本題はここから…。
前回のこのテーマ「いつから始める?公立中高一貫校受験対策」では、それは愚問である、という立場にたって書かせて頂きましたが、それでは悩める親御さんたちにとって何の解決にもならないであろうことも想像がつくため、「強いて言えば…」という前置きを大前提として、具体的な時期を提示致します。
結論から申し上げます。
首都圏はじめ一つの県に3校以上の公立中高一貫校が存在している地域では、目安として小4から、その他の地域では小5から、その準備を始められると良いとのではないでしょうか。
お子さん一人ひとり、その時点での能力差があるため一概には言えませんから、あくまで目安となる平均的なタイミング時期ととらえてください。
小4から始める、小5から始めると区別する理由として、適性検査の問題傾向があげられます。
簡単に言えば、適性検査の問題の難易度や複雑さが違うためです。
適性検査は、その所属する県・市町村単位で問題がつくられます。
一地域に複数の公立中高一貫校が存在している場合、例えば、県立A高校附属中学校、市立B中学校、市立C中学校、のような3校があれば、基本的に問題は県と市とで2パターン作られ、さらにB中学校とC中学校で一部それぞれのオリジナル問題が加わるようなイメージです。
同地域に複数学校が存在すれば、作られる問題も異ならなければりませんから、必然的に問題が多様化します。結果、難易度や複雑さが増すという仕組み。
ただし、この目安の通りに始める場合には、それまでに築いておくべき基礎力があることを添えておきます。
まず小1・2の低学年では、漢字と計算といった超基礎的な力をしっかりと身に着けておきましょう。学校の小テストなどでは必ずいつも満点が当たり前のような、しっかりした学力知識として定着を図ってください。
漢字や言葉の知識が多少ついてきた小3では、漢字計算以外に、音読を頑張らせてください。学校の教科書以外に、一般的な絵本なども積極的に音読させてください。
また、もしできたら、「どんなお話だった?」と、音読した文章の内容について問いかけ、お子さんにアウトプットする機会を与えると良いでしょう。
ここで培う力が、後の作文などで大いなる成果を発揮するようになります。
そして、小学生のうちは、家族旅行などの機会があれば、歴史的建造物や貴重な自然などの世界遺産や、お住まいの県や市の有名な名所などを選んで出かけるようにしましょう。
適性検査は地域に根付いた問題が多く出題されます。
同様の理由から、夕食時などにはご家族で県内ニュースを見ながら、お子さんにその地域で起きた出来事などを、かみ砕いて説明してあげると良いです。
早くから塾などに通わせ、特別な能力を身に着けさせるような、そんな高額な初期投資をする必要などまるで無く、基礎学力を定着しつつ、日常生活の中で「家族とのコミュニケーション」と「自分たちの地域を知る」行動で、公立中高一貫校受験へ向けたベース作りは可能なのです。
公立中高一貫校の受験は、学校のクラスの上位者だけが進学できる何か特別な受験ではなく、その存在意義や目的を理解し、適性検査はじめその課題がどのようなものであるかを把握すれば、どんな子であっても挑戦できるものです。
仮にその適性検査に合格できなかったとしても、その他多くの同級生たちと同様に、指定学区の中学に進学するだけのこと。
中学に上がる前に一生懸命勉強したその積み上げは、中学に入ってからの学びを助ける大事な基礎学力になっているはずで、何の損もないのです。
私立受験のように、「落ちたら恥」とか「落ちたら思い通りの未来が閉ざされる」というような変な重圧を感じることなく、公立中高一貫校の場合は、ただ選択肢が一つ増えて良かったというような感覚で、特別なものでもなんでもなく、挑戦してみてはいかがでしょうか。
幼いうちに、何か目標に向かって努力することや、いかなる壁にも勇敢に立ち向かうという姿勢を経験する価値は、子どもたちにとって、絶対にプライスレスですから。
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