分断された日本の統治を目指す高校生に、勇気を学ぶ。ー後編
「読書のすゝめ」僕のオススメする知念実希人の『屋上のテロリスト』。前編に続きこの後編では、内容の面白さ・ストーリーの魅力をお伝えしていきたい。
第二次世界大戦時。ポツダム宣言を受諾しなかった日本が、アメリカとソ連によって東西に分裂されてしまったところから、物語は展開されていく。
そう。まさにかつてのドイツだ。
無条件降伏を受け入れ、東ドイツをアメリカに西ドイツをソ連に支配され、1つの国が分断され、彼らは自らの政治的決定権を失った。
歴史で学び、もちろん僕にとっても既知の事実ではあるが、それでも随分遠い昔、異国の地に起きた「他人事」である。
しかし、この本を読んで思った。
もし日本があのときのようなドイツになってしまったら・・・もし日本があのとき別の歴史を歩んでいたら・・・または、もしこの先第三次世界大戦が起きて、日本がドイツの歴史を繰り返すような立場になったとしたなら・・・
そんなことをリアルに想像するきっかけとなったのだ。
自分たちの国のことが自分たちの意思では決められなくなるなんて、僕はとても虚しいことだと思うし、ある日を境に、家族や友人らと引き離されるなんて、悲しいというより恐怖だ。
著者である知念実希人は、そういった歴史的事実を物語の背景に持ち出し、主人公やそれをとりまく登場人物には、僕のような高校生たち選んだ。
死に憧れを抱く高校生・酒井彰人が、西日本最大の財閥会長となった、同じく高校生・佐々木沙希と共にテロを起こし、分断された東西の日本統治を目指すのが、この本のあらすじ。
強盗、東日本への密入国、核弾道ミサイルや、政府の裏切り者…
戦後の混乱の中で、高校生とは思えぬ頭の良さで、政府や軍人、大人たちを翻弄し、最後の最後には、誰にも予想がつかない大どんでん返しの結末が読者を待っている。
自分たちの私利私欲ではなく、国家の未来を背負いながら起こす若者たちのテロだから、読んでいる僕は、知らぬまに彼らを応援したい気持ちになっていった。
物語の最後に、大きく夜空に打ち上げられる花火は、文字の中での出来事なのに、僕はついに涙した。
この本からは、何かに挑戦したり、挑む勇気を学ぶ。
それは、僕らの日常にある、部活の試合や受験の勉強や、そういった小さいことではなく(この本を読んだ後の僕には小さく思えるだけかもしれないが)、自分の人生をかけて、人のため・世界のために挑戦する何かのこと。
挑戦には、常に「うまくいくだろうか?」という不安がつきまとうもの。でもこの本は、目的のためにどんな困難をもものともせずに、ただひたすらにまっすぐにやり抜く勇気を、僕に訴えかけてきた。「キミにはそうした勇気が持てるのか?」とー。
医師の国家資格を取得し、病気の人を救いつつ、限られた時間の中での作家業を通して、多くの人の人生に関わり影響する。そんな大業を成し遂げ、挑戦し続ける知念実希人だからこそ、描けた物語ではないだろうか。
誰にでも、何かに立ち向かわなければならないときがある。そんなとき、ぜひ知念実希人の生き方に触れ、この本を手に取ってみてほしい。
Fin…