ネームバリューで志望校を選ぶのは時代遅れ?!大学ファクトブックの真実

高校生のみなさん。

そして高校生のお子さんをお持ちの親御さん。

志望大学を選ぶとき、何を基準にしますか?

 

 

やりたいこと(研究)ができる大学?

家から通える大学?

面倒見のよい大学?

就職率のよい大学?

新しい学部学科があったり、物珍しい取り組みをしている大学?

 

その基準は様々でしょう。

 

 

一昔前のように、ネームバリューのある大学に進んだからといって、必ずしも良い就職ができたり、将来が約束されるような時代ではないことは、誰もが承知の事実ですが、それでもどうしてか我々日本人は、昔からの思い込みが抜けきらず、とりあえずレベルの高い名門大学に行っておけば大丈夫だろう…と、安易な考えを捨てきれずにいるのが現状です。

 

 

 

さて、「大学ファクトブック」というのをご存じでしょうか?

各大学の「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」に基づく取り組みの状況や、産業界との連携実績などのデータを比較評価し見える化することで、産業界と大学の連携をますます促進することを目指し作成されているものです。

 

【文科省HP参照】

↓↓

https://www.mext.go.jp/content/20200630-mxt_sanchi01-000008172_01.pdf

 

 

政府は2025年までに、大学・研究開発法人等に対する企業投資額を、2014年水準の3倍に引き上げることを目標に抱え、動いているのです。

そのため、このような大学ファクトブックでそれぞれの大学の産学連携の現状を見える化しています。

 

 

とりわけ注目すべき点がイマイチぴんとこない方は、とりあえずランキング上位であるなら良いだろうと大雑把に眺めてしまうのかもしれません。

 

すると、天下の東京大学を筆頭に、上位には旧七帝大が君臨し、

「ほら見たことか!結局はネームバリューで選んでおけば間違いないんだ」

と思わざるを得ませんね。

 

 

けれど、この大学ファクトブック。実は資料としてはかなり奥深いもの。

例えば甲乙つけがたい旧帝大であれば、北海道民は北海道大学、東北民は東北大学、九州民は九州大学…というように、お住まいの地域に近い大学を選びがちになりますが、どうせ旧帝大に進学するのであれば、より内容に拘って選ぶのが望ましく、その参考資料にもなり得ます。

また、国立・後期の併願校を選ぶ場合、または高校があまり大学進学には強い学校ではなく、私立本命としてきた受験生が、途中で国立大を狙いたいとシフトチェンジするときなど、非常に参考になる資料なのです。

 

 

この大学ファクトブックは、経団連・経産省・文科省が連名で公開しているデータであるとおり、日本の産業・経済発展の礎となるべく、産学連携実態を明らかにしているわけなので、とりわけその分野の多くは理系であり、当然ながら、企業と共同研究可能である、充実した研究施設等を兼ねそなえた文理一体型の総合大学・理系単科大学がランキングを占めています。

よってこのランキングが、文系単科大学や、それに該当していない専門大学が弱いということを意味しているものでは決してないので、その点予め断っておきたいと思います。

 

 

 

 

さて、それでは具体的にこのデータを、どのように注目し活用していくべきなのか、その一例をご紹介します。

 

 

⒈ 行動力がその強みー大阪大学の強さ

民間企業との共同研究というのは、研究内容の充実だけでなく、そこでのコネクションなどから就職へもつながりやすい特徴があります。

理系の学生の場合、国立大であればその7割以上が大学院に進学する昨今。

かつての教え子たちの中にも、大学院進学後、そこでの研究室で関係のあった民間企業へそのまま就職が決まったという話をよく聞きます。

4年生大卒の初任給と、院卒の就職後の初任給が、月5~10万ほど違いがあるのは、こうした研究経験が実績となり、企業での即戦力とみなされるのです。

ですから、この共同研究実績というのは、大学の研究レベル向上にとっても、企業の研究員やエンジニアといった人材確保や学生たちの将来にとっても、果ては日本の産業・経済にとっても、多角的なメリットをもたらします。

 

話は少々それましたが、その民間企業との共同研究に関わる部分でのランキング。

大阪大学に注目し、2019年と2020年とを比較してご覧ください。

 

【2019年】

 

【2020年】

 

2019年、共同研究受入額・共同研究実施件数ともに1位だったのは東京大学ですが、2020年の受入額では、大阪大学が2,022,003千円もの増額を果たした上で、1位に輝いています。

もう少し詳しく調べてみると、受諾研究は減っているにも関わらず、共同研究としての件数・金額が伸びている事実が分かります。

 

【大阪大学共創機構HP参照】

https://www.uic.osaka-u.ac.jp/target/member/data/

 

このことが何を意味してるかと言えば、大阪大学は、企業から委託されるのを指を加えてじっと待ってるのではなく、自らその研究と資金を得るために行動しているということ。

 

各大学には、産学連携本部が設置されており、民間企業との共同研究等の窓口になっているのですが、大阪大学はまず2017年に産学共創本部を発足させ、新たな組織の再編成と体制改革を行いました。

その上で、民間企業へ大学側から、共同研究の企画と提案を積極的に行っているものと推測できます。

 

新型コロナウイルスによるロックダウンも、大阪はいち早い決断と行動で、早々経済活動再開を実現しました。

商いの街、大阪…。

大学経営に関しても、行動力と実行力が際立っています。

 

 

 

⒉ 地方国立大にも、最強の武器が隠れている?ー信州大学の強さ

10年ほど前、愛知県のとある予備校で高校生の大学受験指導にあたっていたころ。

中京工業地帯という地域柄、意識と学力の高い高校生たちは、名古屋大学工学部を志望することが多く、自動車産業も盛んで、名古屋工業大学、名城大学など、レベルの高い大学が肩を並べていました。

 

そんな中、毎年ある一定数の受験生が、前期で名古屋大学や名古屋工業大学を本命とする一方、後期の併願校に、信州大学繊維学部を掲げていました。

 

正直なところ、合格するための学力レベルは、前期の名古屋大学に比べればかなり落ちるので、失礼な話ではありますが、どうして全国模試の偏差値が65を超えるような優秀な受験生が行きたがるのか、当時まだ指導経験の浅かったわたしには理解できず、あれこれ調べるきっかけになりました。

 

そして分かったことは、戦後の重化学工業が、次第にICチップなど電子機器・情報系へと小型化・IT化したり、宇宙航空系へと移行していき、その結果、製造系の機械人気は衰え、逆にいかに軽量で品質がよく、さらにデザイン性の高いものを作れるかという観点から、素材に注目するような研究が人気を集めるようになりました。

繊維もその一つと言えます。

信州大学繊維学部の研究室の中には、宇宙服や宇宙航空にまつわるものの開発などにも関わるようで、日本唯一の繊維応用力研究室も携えています。また、繊維は医療器具などへの利用も欠かせないはず。

表面的な偏差値や人気度からではなく、そういったより詳しい専門性の高さの観点から、大学選びをしている学生たちが昔からいるのです。

 

今回の大学ファクトブックでも、そうしたいち地方国立大学の秘めた底力が、こうして見え隠れしています。

 

【信州大学HP参照】

https://ipforce.jp/invention-3121-4-3-2019.htm

 

信州大学の繊維学部は、一流企業に散らばるOB・OG達の力もあり、就職先の企業名にも名だたる企業が並んでいます。

 

 

理系の研究分野は、特定の非常に限られ世界の専門性が高いものぎて、表立ってその魅力が伝わりにくい事情がありますが、旧帝大に限らず、こうした地方国立大学にも、国内以上に世界からも注目を集めている誇るべき研究があるのです。

 

大学受験の際は、ただ通学距離や、実際親元を離れ一人暮らしさせたときの距離から判断するのではなく、こうした企業との連携事情も踏まえ判断するのも、志望校選びのコツと言えるでしょう。

 

 

 

 

毎年のように、各教育雑誌や情報誌には、「最新・大学ランキング」や「大学の力」のような独自調査のランキングが掲載されていたりします。

仮に「就職に強い大学」と題したところで、文系は4年で卒業・就職という流れが未だ一般的ですが、理系は大学院進学→就職という流れ、もっと言えば、院卒はそのまま研究室に残るなど、就職しないケースも少なくはありません。

ですから、何をもって就職率とし、その就職に強いとするのか、その基準がいつも曖昧であると感じています。

 

しかしながら、この大学ファクトブック。まぎれもない数値の、まさにファクト!

理系志望の受験生やその親御さんにもぜひ参考になさっていただき、各大学の強みや企業との連携から、大学卒業後の進路までイメージした大学受験ができることを、陰ながら応援しております。

 

 

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